近頃流行りの育児法が大変な訳

中公新書の“子育て法”革命―親の主体性をとりもどすを読み、あー私の考えていたこと、全部言ってくれて、とってもスッキリ!そうだったのか!と思ったので、ご紹介。

この本は、子育てを社会学する本で、母子手帳副読本に採用されている子育てのトレンドが、時代によってどう変遷していったのか、時代背景や各国の風習の子育てを加味しながら辿り、現代日本で信じられている乳幼児子育て法が、どう位置づけられるのかを検討したもの。
というと、固くなるのだけれど、この本を書いたのは、子育て中の女性。手法は社会学ですが、内容は耳馴染みの良いもので、結構さらりと読めます。

岡目八目といいますが、子育ての渦中にあると、今正しいとされていることが絶対の基準になってしまい、それが歴史的に見ると特異な方法であったとしても、その方法が良いとは思えなくても、抗うことが難しいのですが、大きな歴史の流れの中で、180度と言っていいほどの転換や、微妙な変化を見ていくと、これは行きすぎだとか、今はこう言われているけれど、きっと次の子育てはこう変わっていくのだろうなというのが見えてくるのが面白い。

歴史をひもとけば、日本の風習の子育てに、実は、理念はない、というのは新鮮だった。社会的地位が低く、極限まで忙しく働かざるをえない母親の状況では、「泣けば抱く」「泣けば飲ませる」という自由は、実際には母親にはなかった。優先順位は、第一に母親の労働、第二に子供の欲求、というだけ。なので、今言われている「日本式」とは随分、隔たりがある。
他方、小児科の新潮流は、規則的に時間をおいて授乳をし、夜は別室で独り寝をさせる子供に、もっと抱っこなどのスキンシップをしよう、という発想であり、基本となる風習はあくまで「西洋式」を想定しているもの。前提をしっかり理解していないと、見誤る。

全く限界のない中で、子供の欲求を聞くという現在の日本の育児方法を、著者は、こう例えている。(括弧内は私の補足)
車に乗り、左にハンドルをきっている人に「もう少し右にハンドルをきって」とアドバイスをする。車はあまり曲がらず直進するだろう。日本で風習の子育て(泣けば飲ませる授乳や添い寝)をしている様子を、左にハンドルをきっている車にたとえると、少し前の小児医学のアドバイス(端的にいえば、規則授乳や独り寝の推奨など)ならば、右にハンドルをきるよう勧めるものだった。ところが、小児医学の新潮流(つまるところは、子供とのコミュニケーションを増やすなど)が日本に上陸してからは、左にハンドルをきっている人に「もう少し左にハンドルをきって」と勧めているに等しい状況が生まれた。結果的に、日本では極端な子供中心の子育てが広まったのである。

歴史を丁寧にみていくだけで、今の育児方法が、どんなに子供中心で、親の生活を崩壊させてしまうものなのか、というのがよくわかってくる。
この本を読んで、育児ノイローゼ寸前の産後の私に一番役に立った本が、大人の生活の中に赤ちゃんを迎え、赤ちゃんにもルールを課す赤ちゃん語がわかる魔法の育児書で、アタッチメントペアレンティングを勧めるシアーズ博士夫妻のベビーブックではなかった理由が、やっとわかった気がした。

なんで子育てがこんなにしんどいのか、と悩んでいる人、少子化や学級崩壊の背景の本当のところに関心のある人、一読をお薦めします。
現在の育児方法に、論理的にNO!を言い得た貴重な本です。
ちなみに、子供中心でもなく、大人本位でもなく、子供と大人が対等に…というのが、筆者の結論です。
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by yyunn | 2004-10-27 14:23 | 本の話


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